コールドスリープ(人体冷凍保存)中の1,000人は100年後どうなるのか?

謎・ミステリー

コールドスリープとは、宇宙船での惑星間移動などにおいて、人体を低温状態に保ち、目的地に着くまでの時間経過による搭乗員の老化を防いだり、睡眠状態を維持する装置のことを言います。

惑星間移動以外にも、肉体の状態を保ったまま未来へ行く一方通行のタイムトラベルの手段としても用いられることになりますが、SF映画などでよく見られるので知っている人も多いのではないでしょうか。
ちなみに「コールドスリープ」は、和製英語におけるSF用語であることから、英語圏で使われることはなく、冷凍睡眠や長期冷凍睡眠にはハイバネーションやハイパースリープといった言葉が使われます。

SF映画であるような惑星間移動にコールドスリープを使用するメリットとしては、持ち運ぶ食料や飲料水が大幅に節減され、船員のストレス上昇も抑えられるため、実用されれば数年単位の長距離移動も可能になり、研究を率いたメアリー・ハージュドーン氏らによると、絶滅の危機にある動物の保存にも役立つとのことです。

この技術については、まだ確立されていませんが、今後の研究に大いに期待したいところで、この冷凍保存技術はここ数十年で長足の進歩を遂げ、人体に破壊的影響を与えることなく、冷凍保存することが可能となっています。

一方、この技術の応用として、冷凍保存された遺体を復活させる技術開発も期待されるところですが、まだ開発の目処もたっていないそうです。今のところ冷凍保存のプロセスはどうしようもなく不可逆的であるため、今までに冷凍された遺体が蘇ったことはなく、将来的に蘇ることが出来るかどうかは今のところ不明ということになります。

この冷凍技術を牽引しているのはアルコー延命財団では、冷凍保存された死体の蘇生について、分子操作を実現するナノテクノロジに期待しているようですが、『創造する機械―ナノテクノロジー』でドレクスラーが示したようなビジョンが実現するのは何時になるかは誰にも分からず、そもそも可能かさえも分かっていないのが現状です。
それでも海外では末期ガンに冒された患者が、自分がガンで死ぬ前に冷凍保存することを求めて訴訟を起こすなど、冷凍保存によって未来に蘇ることを期待している人が少なくないようです。

今のところは、自分の命や財産を人体冷凍技術に使うことに日本では議論となってはいませんが、いつの日かナノテクノロジによって冷凍保存された遺体の再生が可能になったとしても、それが何百年後であったりした場合、蘇った人間がどのように未来の環境や社会に対応するかという問題もあり、人体冷凍保存という行い自体がナンセンスで神への冒とくなのかもしれません。

アルコー延命財団

先ほども少し触れましたが、この冷凍技術を牽引しているのは、アルコー延命財団ですが、この財団は人体冷凍保存の研究、実行を目的としたアメリカ合衆国の非営利団体で、名前の由来は北斗七星の一つ、ミザールのすぐそばにある暗い星、アルコルよりきているそうです。

同研究所には、いつか再生できるという希望のもと、すでに1,000以上の人体が冷凍保存されているそうで、人間だけでなくペットとして飼われていた動物も保存されています。同財団では、アリゾナ州スコッツデールで、将来クローン技術が確立されたり、遺体からの蘇生技術が開発されることを期待して、液体窒素による超低温下でヒトの遺体を冷凍保存しているわけですが、その目的から設立以来、法学、法医学、宗教、倫理など様々な立場から批判や擁護を受け、人体の扱いを巡ってはよく裁判ざたになることもあり、アメリカ国内外において論争を巻き起こしている団体ともいえます。

アルコー延命財団は、もう50年ほど前の1972年にカリフォルニアのチェンバリン夫妻によって設立されましたが、設立当初はダイレクトメールを送ったりセミナーを開催したりして人々に人体冷凍保存を世に宣伝し、1976年7月16日、初の人間の冷凍保存を行ったそうです。

人体冷凍保存の過程

アルコー延命財団では、メンバー登録している人物の死期が近いという連絡を受けると、スタッフが自宅など本人の傍らに待機し、医師の死亡宣告を以て冷凍保存のプロセスが開始されます。
これは、保存過程の性質上、死後に連絡していては間に合わないためで、さらに、後々の法的争いを避けるために登録メンバーは病院に入院することは少ないそうです。
冷凍過程としては、まず身体は氷水に全身を浸され、人工呼吸装置によって心臓と肺の運動、血液の循環、呼吸が人工的に行われます。これは、意識や身体の機能が回復するわけではありません。

そして、体内には静脈などにあらゆる抑制剤と麻酔薬が注入され、臓器や脳の保存が図られるのですが、その間、同時進行的に死後数分の間に体温を数度にまで低下させ、身体の保全が図られ専用の容器で財団施設まで移送されます。施設到着後、体内の血液を全て抜かれ、保存液が体内に循環するよう注入されます。
最終的に液体窒素により-196℃に保たれ、半永久的に施設内に保存されることとなります。

こんなSF映画のような技術が存在するとは信じがたいですが、実際行われているわけでやく約50年前から研究が行われているのも本当に驚きではあります。

ちなみに人体を冷凍保存するには、本人が財団の登録メンバーとなり年会費を払うことになりますが、年会費は冷凍保存をした後(つまり死後)も払う必要があり、生命保険などを充てる人もいるそうです。

冷凍保存のプロセスそのものには全身保存で約15万ドル、頭部のみの保存で約8万ドルかかるそうですが、冷凍保存の費用に関しては、ライバル企業と目されるクライオニクス研究所は約2万8000ドルという価格を設定しているので、費用にはかなりの差があることがわかります。

冷凍人体の蘇生

さて、一番気になるのは冷凍保存した人体を本当に蘇らせることができるのかということですが、理論的には身体の必要な構造は保存されているため、蘇生は可能だということです。
まあ、そうでなければビジネスとしても成りたたないわけですし、倫理的にもかなり問題があるということになります。

人間の胚細胞は生命化学反応が完全に停止する温度において完全に保存されるそうで、成人は心臓、脳、およびその他のすべての期間が1時間機能停止する温度に冷却されても復活することが出来、これらの事実と生物学的知見から、生命が物質の特別な形態であるということが分かります。

さらに冷凍保存の際には、細胞に凍結防止剤と呼ばれる濃度の高い化学物質を加えることにより、ほとんど氷を形成させずに、組織を非常に低い温度に移行させることが出来るそうです。

120度以下の氷の形成のない状態はガラス化と呼ばれますが、人間の脳程度の大きさの組織を物理的にガラス化させる技術は確立していて、これにより組織を凍らせることなく、組織を理想的な状態で保存することができるそうです。

今後さらにナノテクノロジが発展することで、一度に個々の細胞の1個の分子の修復を含む、広範囲の組織修復および再建を可能にするデバイスが登場すると言われていてこの将来のナノ医学は理論上記憶と個性をコード化する脳の基本構造を無傷で保っている人を復活させる事を可能にすると期待されています。

この技術は技術的な問題のみならず倫理な問題も多くあるようですが、21世紀初頭では不治の病であっても100年後、200年後には治癒できることも期待されるため、とても希望のある技術とも言えると思います。

この技術が今後どのように発展していくか分かりませんが、注目していきたいですね。